第80回 MBAの科目について

平成31年1月15日

■前回の復習

今年最初の千年企業研究会を始めますが、今日もいつもの様に雑談が中心になってしまうのではないかと思います。
前回、労働法の講義の中で、日本の人事制度とアメリカの人事制度はどうなっているかという話をしました。私が40 年位前に3 ヵ月程アメリカに居た時の話を中心に項目毎にアメリカの人事制度の話をしましたが、何と言っても、アメリカの人事制度で特徴的なのはコース別採用という事になります。
アメリカでは、管理職になるのに管理職コースがあります。(もちろん、入社して下積みからTOP を極める人もいますが)そしてオフィサーへの近道はMBAを取得する事だという話をしました。
MBAが取れるビジネススクールは大学院にあるコースです。大学院には他にロースクールという法律のコースもあります。ロースクールは大学を卒業した人達が、司法試験に受かる為に2年間、勉強する所です。
これはさておき、ビジネスの世界はMBA を取る為にビジネススクールに入学し勉強をする事になります。今日はその続きでMBA についてどんな科目があるのかと言う話をしたいと思います。

■MBAの科目について

①Accounting(会計学)
②Marketing (経営学)
③経営戦略
④起業学
⑤ファイナンス
⑥イノベーション
⑦人事戦略
⑧税務
⑨労働法
⑩会社法
⑪企業組織論
⑫国際ビジネス学
⑬統計学
⑭金融論
⑮リーダーシップ論

もちろん、記載した項目が全てではありません。MBA の教科書や解説書を少し読めば、MBA で何を勉強するかはすぐにわかります。
千年企業研究会では、この15 項目全ての項目をやりたいのですが、残念ながら、多くの項目は私の専門外ですので、私がこれまでに経験した事についてのみここでは取り上げているのです。すなわち会社法、会計学、労働法、税法を中心に勉強するつもりです。
さて、ビジネススクールに入ったら、こういう科目を勉強する事になります。しかしビジネススクールでは、大学の学部のように単位を取っていくというイメージとは違うようです。学部でやるのは講義が中心ですが、銀行時代にMBA を取得した後輩(3~4人)に話を聞いてみたところ、講義も無い訳ではありませんが、ケーススタディメソッドを中心に行うとの事でした。
ところで、私は50年前、ケーススタディメソッドを大学のゼミで勉強しました。当時、私の教授はMBA という資格が出来たばかりの頃にMBA を取った新進気鋭の教授でした。教材は全て英語で書かれたものでした。理由はMBA が出来たばかりで、日本語で書かれた教材が無かったからです。
今でも覚えていますが、飛行機会社の例で、日本からニューヨークまでは飛行機が満杯で儲かっているが、日本に帰ってくる便がガラガラで、会社が赤字になっているような場合、どうやったら黒字に出来るか?というテーマがありました。
これは一例ですがこのようなテーマが出されると、自分で英文を訳しグループ討議に入ります。その後全員で討議に入ります。喧々諤々の討論を経て最後に教授のまとめ(講義)でその日の授業は終わりになります。
私は大学のゼミで、このような方法で授業を受けていたのですが、現在のビジネススクールでもまさに、この方法と全く同一の方法であることが分かりました。現在のビジネススクールでも、基本的にMBA 取得に必要な基礎知識は自分で学ぶのが主流のようです。後はケーススタディメソッドで勉強するそうです。

■MBAの理念について

MBAは科目毎の重要度が同じという訳ではなく一番重要なのはMarketing だと言われています。MBA のMarketing の考え方に以下のようなものがあります。

①給料の源泉→②会社にCash がある→③売上が大切→④安定的に販売がなされること→⑤その為には顧客志向(Customer-oriented)→⑥この顧客のWants とNeedsに応える必要がある

このWants とNeeds は内容が違います。

Wants    Needs
手段     目的
短絡的    本質

Marketing はNeeds を発掘する事だと言われています。Wants だけだと大きく道を踏み外すと言われています。例えば眼鏡屋に行って眼鏡が欲しいというのはWants になります。Needs は眼鏡を売ることではありません。顧客は眼鏡が欲しいのではなく、目が見えるようにしたいのです。なので眼鏡だけではなく目の治療(医学的な)をしたり度を合わしたりするのがNeeds になります。だから眼鏡店は将来、医師との連携が今以上に進む事が、大いに予想されるわけです。
もう一つの理念にCustomar is king(God)という考え方があります。これはMarketingの勉強をすると講義で叩き込まれます。50年前のMarketingがこれでした。
この考え方で私の仕事が大いに成果を上げたのを記憶しています。しかしながら現代のMarketing で、当時と変わった点が大きく2 つあります。一つはConsumer is not always king「消費者は必ずしも王様ではない」という事です。これは最近モンスターカスタマーによる過剰なクレームに対して適切に対処する必要が出てきた事にあるようです。顧客対応のコスト面、従業員のやる気を失う事が多発している事が要因のようです。
次に顧客が神様であるようにする為には、その前に従業員が神様であるべきであるという考え方です。いわゆるES とCS の両輪が必要であるという事です。

CS……Customar satisfaction 顧客満足度
ES……Employee satisfaction 従業員満足度

という訳です。
次回はMarketing の復習をしながらレジュメの職務記述書あたりの話をしようと思います。