第83回 日本とアメリカの職階と仕事の仕方について

平成31 年4 月16 日

■日本とアメリカの職階と仕事の仕方について

では、本日の講義に入りたいと思いますが、本日お話しする事は、理論的な事は何もありません。全てがアメリカで見てきた事、聞いてきた事が中心で、現象面のみの話ですので、気楽に聞いてください。今日はアメリカの働き方の特徴として職階の話からしようと思いますが、私が現地で見てきた職位と職階の話をします。

●日 本
会 長    理 事
社 長    副理事
副社長   参 事



係 長
一 般

●アメリカ
chief of department manager
general manager
assistant manager
deputy manage



section chief
Clerk

この様に日本にもアメリカもたくさん肩書がありますが、これは一つの例に過ぎません。何れにしても、この様な職位がたくさんあると、どっちが偉いのか判らなくなります。例えば、assistant manager とdeputy manager のどちらが偉いかなんて、なかなか判断がつきません。
ただ、これの何が問題なのかというと企業の風通しが悪いという事です。したがって、風通しの問題を研究すると職階は少ないほうが良いという事になり、出来るだけ平準化すべきという事になります。当然、職階は縮小傾向か簡素化傾向になります。トップが判断して末端まで行き届かせるためには、階級が多いと伝わらないです。
効率よく伝える為には、出来る限り階層を少なくした方が意思疎通が図れる事になるので、当時は簡素化が叫ばれていました。
しかし、職階の簡素化はあまり浸透しませんでした。それというのも一般社員の心理として何かの役職に就く事は嬉しいからです。組織論的にはスパンオブコントロールという考え方があり、管理する人数は5 人から6 人が適正という事になっている為、意思の疎通の面では階層を少なくした方が良いのですが、なかなか無くなりませんでした。
もう一つ、ヒエラルキーの中で重要なのは2up2down という事です。厳密ではないのですが、例えば次長が公式に命令を受けるのは2up という事なので、部長と副部長が対象となります。確かに考えてみればこういうものがないと組織は統一が取れないと思いますが、一方で風通しを考えれば、出来るだけ職階は少ない方が良いはずです。
他に同職位対応の原則というものがあります。これはアメリカも日本も同じです。
同じ規模のA 社とB 社があったとして、A 社から部長が来た場合には、B 社も同じ様に部長が対応することが原則です。何故なら、そうしないとバランスが取れないからであり、下位の職位の者が対応すれば、失礼に当たります。これが同職位対応の原則になります。
しかしこれには、官民格差があります。私は昔、銀行の企画部に所属していた事がありました。課長時代に関東財務局に行った時は出てくるのは担当者でした。部長になった時に時は調査役とか特別調査役が相手をしてくれました。その後、取締役になって行った時は課長が出てきました。更に副社長の時は部長が出てきましたが、中々局長は出てきませんでした。それでも、社長に同行した時には局長が出てきました。このように同職位対応の原則があっても、官民格差は歴然とありました。
次に、意思決定のスピードですがアメリカのほうが日本より圧倒的に早いです。日本はアメリカに比べて会議が多すぎます。日本は集団で決定しようと考えますし、稟議制度もあります。アメリカで稟議制度を説明するのは本当に困ります。アメリカには殆ど稟議するという機会がありません。
同様に仕事の仕方にも違いがあります。アメリカは個人中心です。日本は集団的です。一番特徴的なのは部屋の座り方です。日本は机を並べて隣通しに座っていますが、アメリカでは机を離して座っていて個人の机の近くに客人用の椅子があります。リスク管理(仕事上の失敗)の在り方もアメリカと日本では違います。アメリカの業績は加点主義で日本は減点主義です。アメリカというのは何か失敗したからと言っても、その人に対して2 度3 度同じような仕事をチャレンジさせます。日本は非常に陰険で一度失敗すると☓がついてしまい、二度と立ち上がれない事が多い様に思います。度合いにもよりますが、殆どの場合、昇進や昇給の道は閉ざされます。その為、日本では上に行けば行くほど慎重になります。社会人の経験を積めば積むほど慎重になります。
コミュニケーションは日本とアメリカは同じです。報連相を大事にします。意外だと思うかもしれませんが、アメリカも個人中心でやっているからこそきめ細かく報連相を実行します。これは小生がアメリカに行って意外だと思った事の一つです。