第84回 利益分配制度について

平成31年5月21日

■利益分配制度について

アメリカにおいての利益分配制度の考え方は、私がアメリカに研修に行った当時から既に反映されていました。そもそも上級職と一般職では報酬に対する考え方が全く違います。上級職は年俸制で、一般職は月給制でプラス賞与があります。なお、上級職は更に役員と部長クラスの二つに分かれています。何故分かれているのかというと、賞与に対する考え方が違うからです。
役員は年俸制ですが、賞与を含むか含まないかは様々です。基本的に年俸制の場合は業績に連動します。また、年俸や給与を決める時も役員と一般社員では異なります。それというのも役員報酬は株主総会の決議事項だからです。今期の業績については、これだけ上げましたので、株主には配当をこれだけ実施したい。役員賞与については、総額でこれだけ支払いたい。といった内容を株主総会に付議するのです。なお、個別の支給金額等については、取締役会に委任する様、株主の了解を取ります。
役員の場合は年俸制ですが、もし赤字で利益が出ていない場合には、当然ながら、役員賞与は出ないケースが多いと思います。したがって、年俸制といっても賞与を含むか含まないかで、最終的な総額はだいぶ変わってきます。
部長級の報酬に関しては、株主総会の決議事項ではないので、賞与は人事査定の中で決めます。この賞与も年俸に含む場合でも部長職といえども業績連動で決まる場合が殆どであります。
何故このような事を言っているのかというと、上になればなるほど業績に左右されるという事で、これが利益分配制度です。因みに賞与とは別に決算手当というものがあります。何に連動するかはその時々に決まりますが、賞与以上に利益に連動します。
そういう意味ではアメリカは給与制度の中で利益分配を重要視した制度と言えます。利益分配制度の一環でストックオプションがあり、アメリカでは非常に盛んです。日本でもアメリカから遅れてかなり流行った時期がありましたが、今は廃れています。
アメリカでは賞与支給の1方法として、ストックオプションがあります。ストックオプションとは賞与の一部として、行使価格で株を購入出来る権利を付与する事です。したがって、ストックオプションは原則として上場企業でなければ出来ません。
ストックオプションのしくみを簡単に説明すると、仮に1,000 円で3000 株買う権利を貰ったとします。行使開始日(期間)を決めておいてその時に株価が1,100 円だったとすると30 万円の儲けになります。つまり、ストックオプションは行使したら現金で入ってくるのです。この辺のやり方は、この他にも4~5 通りあります。
日本でも今から10 年位前にストックオプションが盛んでしたが、今は大半の会社が止めています。理由は税金問題です。かつては、一時所得とか雑所得でかつ、分離課税で申告出来ましたので、税率が一定でした。しかし、その後、日本ではこれを給与所得と認定しました。給与所得は累進課税ですので、それなりに利益が出ても、多額の税金を取られてしまい、余り面白みはありません。裁判で争いましたが、負けてしまった為、日本では廃れてしまいました。尤も日本の企業でもNY に上場している企業等は結構実施している事が多い様です。
ストックオプションは株価を上げれば上げるだけ成果が出ます。これが利益分配制度の最たるものです。経営陣は業績を上げると株価が上がりますので、自分の懐が潤います。ストックオプションの行使に当たっては、色々な条件を付ける事があります。
最たるものは、株価がある一定金額以上になったら、行使出来ると認めることです。その他に時価総額を基準にする場合もあります。
最近、GAFA(Google、Apple,Facebook,Amazon)は時価総額をかなり意識しているそうです。この4 社は時価総額それぞれが100 兆円だそうです。出来て20 年位しか経っていませんから、経営陣はどれほど儲けたのかという話になります。このようにアメリカではダイナミックに利益分配制度の運用をしています。要するにインセンティブの動機付けをどのようにやるのかという事です。これによりアメリカではダイナミックに企業が発展してきたと言っても過言ではないと思います。
私が今日、本当に話をしたかったのはここからです。皆さんが社長になった時にどのような制度にするかという事です。
アメリカでの給与体系は業績連動型が多く、それの最たるものがストックオプションです。日本では同じ様なものがあり、業績連動もしていますがアメリカと違い非常に緩やかです。
アメリカでは、給与でも賞与でも短期的視点で判断します。一方、日本では、長期的な視点に基づいて判断されます。人材育成もアメリカは盛んですが、基本的な考え方は自己責任という事であり、自分で勉強する必要があります。日本の場合には集団的、底上げ型が特徴になります。
コンプライアンスはどちらも重視しています。どちらが事故が多いのかという判断は難しいのですが、アメリカ型の方が多いと思います。アメリカと日本を比較した場合、アメリカは非常にダイナミックで同じ制度とは思えないくらい金額が違います。
アメリカの方が強欲です。例としてのが一番いいのが、プロ野球だと思います。ああいうスポーツの世界に準ずるのが、上場企業の経営陣の報酬ということです。
皆様が考えなければならないのは、社長になった時に今お話しした様なアメリカ式(業績連動で激しい形)の給与制度が良いか、日本式(業績連動型を重視するものの、さほど激しいものにはしない)のどちらを取るのかという話になります。
どっちが良いとは一概に言えませんが、余りにも激しい成果型の給与体系にすると従業員が不祥事を起こす可能性が大きくなると思います。地道にやっていくような会社づくりをするか、儲ける時に儲けるという経営をするのか、どちらにするか念頭に置いて経営をする必要があります。

■休暇と食堂について

私が研修に行った時、今でも鮮明に覚えていることがあります。コンピューターの会社でバロースという会社がありました。当時、私が勤務していた銀行で使っていたコンピューターの会社だったのですが、ニューヨークの郊外にあるバロースの本社に行った時にヘリコプターでニューヨークを案内して貰いました。低空飛行だったので、住宅地が一望出来ました。ところどころ、青い点々があったので、よく見ると、プールです。プールがある広い敷地の高級住宅地でした。アメリカという国は本当に豊かな国で凄いなと思いました。日本は理想的な共産主義と言われる位、平等な社会で、それはそれで良いのですが、アメリカを見て、私も当時は上昇志向に火が付いたと思っています。
一方、アメリカで研修を受けていた時に役員から食事の招待を受ける機会がありました。役員食堂に案内されたのですが、何が驚いたのかというと私にサーバントがついた事です。ステーキなどフルコースで役員は毎日こういう食事をしているようでした。たまたま一緒だった担当部長に話を聞いたところ、初めて入ったという事でした。
アメリカでは役員になると、毎日このような豪華な部屋で豪華な食事が出来るのかとほとほと関心したものです。
本日は誠に冗長な話になりましたが、何かの参考にして頂ければと思います。