第89回 アメリカでの研修を通して感じたこと02

▪️語学の本質はコミュニケーションを図ること

本日は英語の発音、リスニングについてのお話を中心にさせて頂きます。
以前もお話しましたが、英語を話せたり理解出来なくても我々の仕事に大きな影響はありません。しかしながら国際化社会になってきているにも関わらず、海外の方と比べて我々日本人は何故聞き取り出来ないのかという事を理解しておく必要があると思います。何故聞き取りが出来ないのかという原因が判り、その点に留意して海外の方とコミュニケーションを取れば、聞き取りが出来る様になり、相手に伝えられる様になるという事に繋がっていくと思います。このことを理解し英語で会話をすると格段に上達するのではないかと思います。海外研修等での経験で自分なりの英語の体得の仕方を身に着け理論的に理解したのですが、それをその後も実行し続けていれば良かったものの、その後仕事の忙しさにかまけてしまいました。やはりその3ヵ月の強烈な印象、周りはみなアメリカ人に囲まれている究極の状況に追い込まれたことにより必死になって体得し、帰国する時には自分でもリスニングの力がついてきたなと自覚する程になりました。

私が特にお伝えしたいのは語学というのは文法がどうとかリスニングがどうとかいう事ではなく、コミュニケーションにおける手法の一つであるという事です。コミュニケーションというものの本質は語学という点だけを抜き出して考えてはいけないという事です。語学とは自分と異質な存在と、語学という学問を通してコミュニケーションを図る事です。これが一番大切な事です。そのコミュニケーションを図る為に相手へ私が言いたい事を伝えられる、相手が伝えようとしている事を理解出来れば良い訳ですから、先日からお伝えしていて、レジュメにも記載してある通り、

1.人間関係を大切にする
2.雰囲気やジェスチャーも大事な情報
3.熱意は通じる
4.恥ずかしがらない
5.わからなくてもいいから質問・発言をする
6.大きな声、明るさで話す、最後は日本語でも通じる
7.単語一つでも立派な会話、一番悪いのは沈黙

この1~7が大切で、日本人は恥ずかしがり屋が多く、小さな声で話しがちでリアクションが小さい事もあり、アメリカ人から見た場合、とても異質な存在に感じてしまわれることが多い傾向があります。日本人は何をしても反応しない、感動しないと思われてしまいがちですが、そのように思われてしまってはダメなのです。ですから前回もお話した通り、研修でアメリカに滞在した際に私は自分の置かれていた環境に対しコミュニケーションを図る事の大切さを切実に感じ、「今日から私はアメリカ人になりきろう!」と思い立ち実践した訳です。先にも挙げました1~7の考え方、コミュニケーションを図るという事は経営者の経営姿勢にも通じると言えます。そう考えると、語学は仕事に影響しないと話したものの、ここまでお話してきたのはこの本質的な部分を皆さんに捉えて頂き、とても大切な事だと判って貰いたかったのです…。

これまでの話を纏めると、お伝えしたい事は「SIMPLE IS BEST」という事です。難しく考えてはいけないという事、物事を難しく言おうとしてはいけないという事です。先程7で挙げた通り、単語一つでも良くそれで充分伝わるのです。外国の芸能人が来日した時、「おはようございます」や「こんばんは」と発言しただけで日本語ができるのだと感心しますよね?私達が海外へ行った際にも同程度の単語は判りますし、話す事も出来るのですが日本人は恥ずかしがり屋でなかなかそれすら言えなかったり、その表現で良いのか、失礼にはならないか、この文法でいいのか等と考えてしまい、何も言えなくなってしまう訳ですが、それがダメなのです。言葉で文章を作ろうとするからダメなので、先程もお話した通り、「SIMPLE IS BEST」単語一つでもいい、場合によっては日本語でもいいから伝えようとする事が大切で、その熱意が通じて日本語でも相手に伝わり通じる事もあるのです。これがコミュニケーションの面白い点でもあります。また「DON’T BE PERFECT」、つまり完璧を期そうとしなくていいという事です。完璧にしようとするから固まってしまう訳です。そして前回の感想で田中さんが挙げていた出川イズムといいますか、出川哲朗さんのあのコミュニケーションの図り方が大変素晴らしいという事です。因みにこの出川さんに通じる話として、デザイナーのコシノジュンコさんのエピソードを紹介したいと思います。
日経新聞の「私の履歴書」というコラムで2019年8月10日付の朝刊にて掲載されていたお話ですが、今から正に50年~60年前の高度経済成長期に欧州視察という企画でパリを訪問した際のエピソードが紹介されていたのですが、同行したお母様が岸和田弁ですべて通したのに何故か通じていて不思議に思ったお話もあったのですが、ご自身の笑い話として紹介されていたエピソードが出川さんと同様、とても機転が利いていて秀逸だと感心しました。

パリのジバンシィで購入した香水をトイレに置き忘れてきてしまった事に気づき、すぐに引き返したそうですが「私は忘れ物をしました。」という事をどう伝えたらいいか判らなかったそうです。それでもとっさに名曲「想い出のサンフランシスコ」の歌詞を思い出し、「♪アイ レフト マイ パフューム イン トイレット♪」と歌ったところ、スタッフに通じ対応して貰えたというエピソードが紹介されていました。それを読んだ私はコシノジュンコさんは出川さんに通じるものがあると思いましたし、ご存知の通りコシノジュンコさんは大成し世界的な活躍をされているデザイナーですが、フランス語が判らなくても自分が体得したいという情熱で多くの事を学び体得していかれたのではないかと思います。
ここまでは前回の復習も兼ねてのお話を致しました。
本日はここまでのお話を踏まえたうえで、それでもやはり語学そのものが重要という事をお話したいと思います。また、何故私達が外国の方が話す事を聞き取れなかったり、相手に伝わる様に話せなかったりするのかその理由についてお話したいと思います。

まず語学に携わる際に、「読む」・「書く」・「聞く」・「話す」この4つの分類があります。私たちは「読む力」・「書く力」という分野に関しては受験にとても関わっている分野で、読んで訳す、読んで文意を掴んだ上で文法を踏まえ英文で回答をしたりすることは大変なじみのある英語の勉強の仕方です。ですが「話す力」と「聞く力」に関しては試験をしておらず我々の世代などは特になおざりになっていたことは否めません。ですが実際に海外に行くと一番必要になるのは「話す力」と「聞く力」なのです。
本日冒頭でもお話をしましたが、なぜ私達は英語の発音をはじめは聞き取れないのかという事なのですが、説明する際に一つリスニングテストをしてみたいと思います。「タイタニック」という以前大変ヒットした映画がありますが、その主人公が船首で風を浴びながら叫ぶ言葉ですが、ほぼ日本人は聞き取りが出来ないそうです。

「I’m the king of the world」
単語としてはKing=王様、World=世界というこの2つ位ですね。

ここからが重要ですが、これを我々が学校の英語の授業で発音した場合「アイム ザ キング オブ ザ ワールド」と発音すると正解だった訳です。アメリカでの発音を踏まえますと「I’m」は「アイム」で一般的ですが、この次の「the」を「ザ」と発音することが問題で“th”の発音で舌を出す発音で尚且つこの場合は発声しない訳ではないのですがほぼ発声していない寸止めといいますか、サイレントでの“th”の発音で、この場合はKingとWorldを強調したいのです。そしてこのKingがなぜ「キング」とは聞き取れないのかというと、前回もお話しました通りアメリカの英語は強調したい部分とそうではない部分の差が激しい為、Kin(g)と“g”がサイレントの発音をしておりその後の「of」と引っ付き「Kin(g) of」とKingの“n”と「of」がリエゾーンにより「キンノ(フ)」と聞こえるのです。また、今度は「of」の“f”の発音は下唇を噛んでおりこれもサイレントな発音です。更に

その次の「the」は先のものと同様サイレントでさらにその次の「World」が強調されます。またこの「World」も極端に言えば「は「ワー(ルド)」と語尾がサイレントな発音になっている訳です。日本人が「ワールド」と発音するような発音をアメリカではしていないのです。これは日本の英語教育がよろしくないと言わざるを得ない所以でもあります。英語教育を受け始めた知り合いの中学生にこれまでお話をしてきた強調する点やリエゾーン等説明し実践させると授業で大変発音を褒められたとのことです。リエゾーンと最後の音が聞こえないケースが多く、強調するところは徹底的に強調する点が、発音のコツでもあり、Listeningのコツでもあるのです。これを知っているか知っていないかでかなり変わってきます。

前回のレジュメでも紹介をしましたが実体験で感じたのはアメリカでの発音は、「BETTER」は「ベター」ではなく「バラー」、実体験でアメリカ人の発音で「バレリスナ」と聞こえた事があったのですがこれは良い聞き手「BETTER LISTENER」ということでした。“t”の発音を私たちは“タ”と習ったと思いますが、実際は“ダ”や“ラ”時には“レ”だったりするのです。その他にも、「I WANT TO GET UP …」は「アイ ウォナ ゲタ 」となりますし、「LATER」は「レイター」ではなく「レダー」と発音していますが、この原理を授業で教えていない訳ですから我々はいつまで経ってもリスニングが出来ないのです。「WOOLWARTH」(※ハワイのデパート)については「ウールワース」では通じず「ウールワース デパートメント」と伝えると何とか現地の方に伝わり“ヴルベイ!”と反復されたことがありました。“W”は“V”を重ねていますし“th”は先にもお話しましたサイレントの発音で尚且つこの場合強調されるのは「WOOL」の方になることから日本人的な発音とは全く異なる発音になっていた訳です。

アメリカ人が英語を話す際にその表情といいますか、口の動きをよく見て頂くと日本人とは全く異なる動きをしていて特に舌や唇の使い方が日本語にはない動きをしているかと思います。その為、“日本人”が英語を話そうとしても舌を噛んでしまい発音出来ないですし、日本人が英語をネイティブの様に発音出来ないのはしょうがないことなのです。ですから以前お話しました通り、日本人ではできないのであれば私がアメリカ研修の時に発起した「今日から私はアメリカ人になりきろう!」ということへ繋がるのです。もちろん言葉だけではなく気持ちの持ち方やジェスチャーを含めてアメリカ人になろうとしたらリスニングが良くできるようになったのです。それでは最後に実体験からリエゾーンの例をいくつか挙げていきたいと思います。「CONNECTICUT」は「(ヶ)ネディカッ(ト)」や「THANK YOU」は“th”ですので「タンキュー」や「センキュー」、発音の強調により「PHILADELPHIA」は「(フィラ)デルフィ(ア)」です。次のリエゾーンの例については覚えてしまった方がいいと思います。実際にはこのように発音している訳ですから、むしろこれは覚えなければいけないと思います。

このようにリエゾーン等の影響により私達が受けている英語教育で学んだ表記や発音と実際のリスニングにこれだけの隔たりがあるのですから、我々日本人が海外の方の英会話の聞き取りが困難に感じたり、私たちの英会話が相手に伝わらないのは当然だと思います。先程もお話しました通り英語を学び始めた時にこのリエゾーンや強調の仕方について教えてくれる環境があるかないかがとても重要になりますが現状の日本の英語教育ではこの点は不十分と言わざるを得ないのです。今後、皆さん方のお子さんやお孫さん等への英語教育は幼い時からやらせた方がいいと思いますし、尚且つ日本人が教えるのではなく、これまで私が話してきた様な原理原則をしっかり理解している人(ネイティブでなくとも)が良いのではないかと私は実体験を通じて感じています。

アメリカでの研修での体験談について今までお話をして参りましたがこの体験談は本日で終了です。次からは働き方改革についてお話をさせて頂きます。