第131回 千年企業研究会(福井塾)議事録
令和6年9月17日
法人税について
8月はお休みとさせて頂きましたので、今回は暫くぶりの勉強会、また法人税は前回から始まったばかりで、2回目という事もあり、前回を振り返りながらお話をさせて頂きたいと思います。
法人税を学び始めた訳ですけども、終わる迄に何年掛かるか、ちょっと見当もつきません。けれど、今日か次回位迄で、皆さん方に所謂、法人税というものの概念をイメージとして捉えて頂き、頭の中で「法人税はこうして出すんだな。」という様な事を、相対的な形で頭の中に入れて貰いたいと考えています。
各論に入る前に、法人税の趣旨を記載したレジュメがありますから、レジュメに沿って話していきます。話していく内容は全部レジュメに書いてある事ばかりです。ただ書いてある事以外の話もします。それは何故かというと、冒頭にお話した通り、皆さん方に法人税っていうものを、相対的な形でイメージして貰いたいからです。今日は先ず始めに公式を、レジュメの 1ページ目の真ん中辺りに書いてある、会計上の「収益-費用=利益」・・・これ前回もお話しました。また税務上の「益金-損金=所得」という公式は、これからも嫌っていう程、出てきます。この公式が原点となるので、今日はこの公式の意味合いといいますか、その様な事を中心に話をして、皆さん方に、なるほど法人税というのは、そういう事かと、一層言葉の意味を理解して頂きたいと思います。
前回お話しました、「収益-費用=利益」ですが、一般的には、収益っていうと、利益を思い出してしまう。広辞苑の辞書を引いても収益=利益っていう表現も出てきます。でも、会計上はその表現は間違いなのです。この辺をしっかり捉える、しっかり捉えても、我々日本人ですから、喋ってる時に、収益を利益という言葉に履き違えて平気で使っているんです。これは日本語の曖昧さで、仕方ないのかもしれません。ただ、会計上、皆さん方が言葉にする時は、収益はどちらかというとイメージ的には売上です。「収益-費用=利益」この会計上の損益計算書の方式からも売上に近いイメージが判ります。本来はこの公式だけあれば、利益から何%が税金と計算されてしかるべきです。それなら判り易い。
ところが税務上は「収益」を「益金」と置き換え、それから「費用」を「損金」に置き換え、そして置き換えた益金から損金を引いた分を「所得」と言います。税務署はこの所得から税率を計算し、税金を徴収します。そこで今日は代表的に、この費用から損金に転換するイメージを、皆さんに話して参ります。
費用から損金に変えていく、その代表例として「交際費」をテーマに取り上げます。交際費というのは、会計上、全部費用です。ゴルフで接待しようと銀座で接待しようと、これは使った費用は交際費として、会計上は全部費用です。これを否認する人はいません。ただし税務署は、全額費用として認めず、費用から接待交際費を引いたものを損金としています。それと同じ様なものに寄付金や役員の賞与、減価償却費等もあり、各論のところどころで細かく出てきますが、今回は交際費だけを取り上げ、交際費を除いたものを損金として下さい。そして、収益から益金に振り替えるものはなかったという前提で、益金-交際費を引いた損金、これが所得になる訳です。逆に言うと、利益に交際費を足したものが所得となります。その交際費×実効税率40%としますと、仮に大企業だとして、交際費を20億円使っていたとしたら、この20億円が所得に乗っかります。この乗っかった20億円という部分は×実行税率40%で 8億円の税金が掛かってくるという事です。要するに益金-損金で所得を出す時に、そういう計算を税務署はしている訳です。
因みに実効税率という言葉も今さらっと言ってしまいましたが、定義がきちっと決まっています。レジュメには色々と書いてありますが、あまり詮索せずに税率と考えて頂いても結構です。
こういう手続きを行なうのが、確定申告書でいう別表4となります。別表という言葉も今回覚えて頂きたいのです。何で、別表4が急に出てきたのかというと、収益から益金に変えたり、費用から損金に変えたり、こういう手続きを別表4で行っているからです。法人税の確定申告という事で、確定申告書を下さいと、法人税の係にお願いすると、別表4をくれる筈です。我々一般企業については、この別表4を使って確定申告をする訳です。皆さん、源泉徴収されてる人は自分達で申告しないでしょうけど、個人事業主は所得税も確定申告してる訳です。
別表について、別表1は公共法人、NHK等は税金が実は掛からないんですよ。公共法人用として別表1というのがあります。それから別表2が公益法人。これは何かっていったら学校法人みたいなところです。宗教法人もそうだったかな、こういうところが公益法人です。学校法人にしても宗教法人にしても、基本的には税金掛からないのですが、収益事業をしている部分についてだけは、儲かった分は税金を払いなさいとなってますから、別表2がある訳です。それから、協同組合、信用金庫とか信用組合等は別表3を使う。一般企業、我々の様な一般企業については別表4を使って下さいとなっている訳です。ですから、一般企業が税務署に行って、確定申告書を下さいと言うと、あなたは一般法人ですか、では別表をあげますと、別表4をくれる訳です。別表4の構成は、最初のスタートが当期純利益です。最終利益が法人税の確定申告書を作成する時に最初に記入されるんです。その後も、益金算入、益金不算入、損金参入、損金不算入の四つの欄があるんです。さっき説明した交際費は損金不算入といい、税法上損金、費用として認めませんとなります。それが寄付金だろうと、役員の賞与とか、減価償却の出っ張り部分だとかですね、これはさらっと流してください。これは後々のレジュメでも出てきます。その代表例として交際費で説明しました。
決算書をつけなさいって言われた時に、何をつけるかというと、一般企業は貸借対照表BS、損益計算書PL、それと株主資本等変動計算書を付けた3表となります。税務の決算3表はそういうものですけど、上場会社の場合、求められてるものは何かといったら、BS/PLは一緒で、残りはキャッシュフロー計算書を義務付けられています。上場企業の場合には、株主資本等変動計算書もキャッシュフロー計算書も全部載せます。けれど、税務署はキャッシュフロー計算書が要らないんです。何でかというと、キャッシュフロー計算書というのは資金繰りです。会社の財政状態とか、そんなものは税務署には必要ありません。株主資本等変動計算書は、資本勘定の動きとなり、これは税務署も非常に関心持ってますから、これはつけて下さいという事なんです。確定申告書に決算書をつけて、計算をするとこういう事ですね。交際費については、所謂損金不算入になりますとお話をした訳ですけども、次に税率の話をします。
まず法人税率、これも何年かに一度変わってきますけど、最近は殆ど変わっておらず23.2%、これが基本となります。法人税率は23.2%、そしてその中で、資本金1億円以下の中小企業で、所得が800万円迄については、15%となります。我々はその資本金 1億円以下の会社ばかりですから、中小企業に該当します。法人税上の中小企業に入る訳ですから、800万円までの所得は15%となります。ただレジュメには中小企業は 19%の軽減税率を適用するって書いてある、間違いじゃないかと。厳密に言うと間違いじゃないんです。何故か法律で決めてある中小企業の税率は19%となっているのです。15%は時限立法なんです。所得が800万円迄というのは、本当に零細企業ですから、19%はちょっと過酷だよねとなり、今の段階では時限立法で15%となっている訳です。そして、800万円を超えたら23.2%となるのです。
法人税はある程度一定ですが、所得税は一定税率じゃないんです。皆さんご存知の通り、所得が低い人は税率が低く、所得が高い人は税率が高い、これを累進税率って言うんです。これも一般常識として累進税率という言葉も覚えておいて貰いたい。この累進税率には単純累進税率と超過累進税率というのがあるんです。単純累進税率は、例えば 100万円迄が10%で、それから 100万円から200万円迄が20%、200万円から300万円の所得の人が30%と増えていくのが単純累進税率となります。超過累進税率がどういうものかというと、150万円の例でいうと、100万円は10%って決まってます、それから超過した部分の50万円、50万円の部分は20%と増えていくのが超過累進税率です。
ここで、ちょっと整理をしますと、法人税はそんなに難しくないんです。損益算入だ、損益不算入だとか、勘定科目も何項目もありません、だからそんなに法人税ってのは難しくない。でも法人税法そのものは何百ページってあるので難しい。例えば、減価償却費について会計学上は自由で、何年で償却しようと構いません。利益が沢山出てる会社であれば、一気に落としていいんです。一気に落とせば減価償却費として計上して、税金が安くなります。でもそれだと公平にならないって言うので、減価償却期間を税務署が細かく決めているんです。だから税務署の言った通りにやってないと改めてまた計算しなきゃいけない訳です。
まず、会計学をきちっと学んで、その中から、会計上認めませんよという税務署が言ってる事はこれこれですよというような覚え方がやっぱり本質だと思うんです。そういう事で本日は、所謂総論として、皆さん方にイメージとして、法人税という概念を、話させて頂きました。税務上という言葉を、頭の中に入れて貰う事によって、今後、会計学や、税務署や法人税の理解が深まると思います。次回は更に各論に入って話していきたいと思います。是非ご出席下さい。
以上